おはようございます。マスゴミマイラーです。
昨日は1年に1回の漫才の祭典「M-1グランプリ2017」の決勝が放送されましたね。僕も同じマスコミの端くれの人間として、どうしても感想を書いてみたいなと思ました。そう思わされる内容だったんです!結論を先に言ってしまいますね。何が言いたいかというと同じ裏方として見ても「スタッフの漫才愛がほんとに素晴らしい!」ということなんです。
目次
同業者だけど…「M-1グランプリ2017」には嫉妬しない
まず、僕は「M-1グランプリ」の関係者でもなんでもありません。ただの同じマスコミで働く人間です。そんな僕がテレビ番組を見ていて、自分が関わっていないヒット番組、高視聴率番組を見ていて思うこと、そのほとんどは「悔しい」という嫉妬心です。たとえ自社が作っている番組でも、他社が作っている番組でも、自分がお世話になっている放送局の番組でも、お世話になったことがない放送局の番組でも、ヒット番組を見て思う最初の感想は「悔しい」の一言がほとんどなんです。「俺だってこれくらいできる」「俺だってそんな発想はできる」「俺だったらこうしていた」「俺だって俺だって…」となることが多い。それは、テレビ番組だけじゃなく、新聞記事だって、雑誌の表紙だって、ニュース報道だって、人気CMだって、それがヒットしたり話題になったりするとどうしても嫉妬心が湧いてくるもんなんです。いやーー小さい人間ですねーーー\(^o^)/ ただ、昨日の「M-1グランプリ2017」に関していうと、そんなちっぽけな嫉妬心は生まれませんでした。ただただ「感動」したんです。何にって?もちろん、漫才師のみなさんの頑張りにも涙が出るほど感動しました。でも、それだけではなく、いやそれ以上に「スタッフの番組への愛」「スタッフの漫才への愛」が感じられたことに感動したのです。
漫才が好きだから…とにかくみんなを平等に!の精神
今回の「M-1グランプリ2017」の注目ポイントはなんといっても「笑神籤(えみくじ)」制度でしょう! もう皆さんもご存知だとは思いますが、「笑神籤(えみくじ)」制度を簡単に説明するとこんな感じです。
「笑神籤(えみくじ)」制度
決勝の生放送の冒頭で敗者復活組を発表。出場10組が出そろった時点で、ネタ順の抽選を行うこととなるが、MCが引き当てたコンビがそのままネタ披露へと移るという、ネタ順が最後まで決まらないシステム。
すでに十分すぎるくらい、おもしろい番組・漫才の大会として確立されているM-1グランプリ。視聴率に関しても、後発の「R-1グランプリ」「キングオブコント」などとは、もうダブルスコアで完勝するくらいですし(ちなみに今年の視聴率は関東地区が平均15・4%、関西地区が平均24・0% どんだけ関西人漫才すきやねん!笑)、正直いまさら無理をしなくたって、新たな改革をしなくたって、テレビ番組として自らの地位が脅かされることはないくらいの位置にまで着ています。
それでもスタッフたちはきっと考えたんだと思います。「どうしても出番1組目の漫才師は不利でかわいそうだ」「逆に敗者復活戦を勝ち上がってきたコンビは、不利なトップ出番を避けられる上に、演出的にも最高潮に盛り上がる中、漫才をすることになり有利だ」。この、有利不利の是正をおこないたい。漫才コンテストとして、なんとか決勝まで勝ち上がってきた漫才師たちに、平等に戦わせてあげたい。その思いが、この「笑神籤(えみくじ)」制度となったんでしょう。
同業者が思う「笑神籤(えみくじ)」制度の危険性
ですが、この「笑神籤(えみくじ)」制度を採用することは、大変な苦労を伴う並大抵のことではないと僕は思うのです。今まで築き上げてきたたくさんのメリットを失うことは、スタッフサイドにたつと容易に想像できますからね。たとえば…
漫才師側からの不満「準備ができない!」
漫才ってテレビや舞台で見ていると分からないと思うんですが、その事前準備たるや、すさまじいものがあります。ネタ合わせと呼ばれる、2人だけのリハーサル。これをほんとに直前まで行う漫才師がほとんど。舞台に出る前に、何時間も前から何回も何回も、それこそ直前まで漫才師たちはネタ合わせを繰り返します。また場合によってはネタを直前に変更する漫才師もいるわけです。なぜか?たとえば自分より前に出たコンビが「引っ越し」のネタをやったとします。自分たちが用意していたネタも「引っ越し」だった!うわ、どうしよう!となるわけですね。もちろん、完全に別のネタにしようという考え方もありえますし、あえて「さっきのネタとかぶっとるがな!」というツッコミを冒頭にいれることで、それをも笑いに変えてしまおうという漫才師も出てくるかもしれません。要は、直前の直前まで、漫才師たちはネタ合わせをしたがるのです。もちろん、そんな不測の事態が起こらなかったにしても、ただただ不安と緊張を解消するために、漫才師はネタ合わせを何度も行うわけです。それができなくなる今回の「笑神籤(えみくじ)」制度。漫才師側からの反発は必至。今後も続けていくであろう「M-1グランプリ」にとって、出場者である漫才師たちの反感を買ったり、遺恨が残ることは絶対に避けたいところです。
しかも、たとえ漫才師の反発をおさえられたとしても、一番怖いのはこの制度を採用したことで、万が一ネタが飛びまくる漫才師が出まくることです。そうなると、漫才番組としてのクオリティが保てません。結果、全然漫才おもしろくないやん!となり、さらには視聴率の低下につながりかねない。翌日のスポーツ紙やネットニュースには「新制度のせいでグダグダ」と批判されまくることは想像に難くありません。これはスタッフサイドにとってもっとも避けないといけない事態です。
スタッフ側からの不満「準備ができない!」
そしてこの「事前に準備ができない」というのは、スタッフサイドにとっても致命傷になりかねません。テレビ番組には細かい段取りがあってそれがすべて台本に盛り込まれています。でも、この台本が今回の「M-1グランプリ2017」は作りにくい。たとえば、漫才師の紹介VTRひとつとっても、考えなければいけないことが格段に増えます。
まずは単純にVTRを出す準備ができない。普通は前の組が漫才をしている最中に、次にどの漫才師の紹介VTRを用意しておけばよいか、十分な時間があります。二重三重にチェック体制をとることができるのです。しかし今回の「笑神籤(えみくじ)」制度では、そのチェックをする時間は皆無だったでしょう。MCの今田耕司さん上戸彩さんがクジをひいた、その10秒後には次の漫才師を紹介するVTRを流さないといけない。これはスタッフにとって想像以上に過酷な環境です。生放送なのでミスは許されない。まして漫才の日本一を決める賞コンテスト番組。違う漫才師のVTRが流れて、会場の空気がよどんだりしては、漫才のウケに影響がでかねません。漫才師たちの一生がかかっているコンテストなんです。スタッフのミスで、他人の人生を左右しかねない。スタッフの負担・プレッシャーは計り知れないものになります。
またその紹介VTRの内容やナレーションにまで気を遣わないといけません。最初から出る順番が分かっているのなら、たとえば1組目の漫才師の紹介VTRには「さあ出番1組目からの優勝へ、中川家と同じ奇跡は起こせるか!?」というようなナレーションを組み込めます。でも今回は誰が1組目出番か分からないので、そんなナレーションは入れられません。そういう演出はかけられないわけです。他にも、今大会はCMに入る直前の画やテロップも今回は苦しかったです。昨年までなら、それこそ直前にネタ合わせをしている緊張度最高潮の漫才師の画が入り、CM直前テロップには「昨年のリベンジを果たせるか?和牛」みたいな文字が踊ったことでしょう。CM前の引張りとしては素晴らしい効果が期待できます。でも「笑神籤(えみくじ)」制度を使った今回の「M-1グランプリ2017」では、そんな演出もできない。これも視聴率低下の原因になりかねません。細かいことを考え出すと、もっともっとこの「笑神籤(えみくじ)」制度による、スタッフ側にとっても不利な部分、負担増は考えられるわけです。
それでもスタッフはこの新制度を導入しました。今までと同じやり方をしていても、誰からも不満はでなかったであろうに、むしろ新制度による弊害や不平不満、批判が噴出する可能性さえあったのに、あえて挑戦した。ひとえに「漫才コンテストとしての平等性」を追い求めるために。もうそれだけでも僕は感動したのです。
同業者だから気になる!スタッフのこだわりはココにもあった
というわけで今回の「M-1グランプリ2017」で最大の改革、かつ最大の漫才師への愛が「笑神籤(えみくじ)」制度だったと思うんですが、他にもスタッフの番組への思い、漫才への思いは随所に感じることができました。
漫才師紹介VTRにも垣間見えた公平性
実際に漫才をする直前に、次に登場する漫才師の「紹介VTR」が流れるのは、どの賞コンテストでもおなじみですね。「M-1グランプリ決勝進出が、ほぼテレビ初出演」のような漫才師もおられるわけですから、知らない人のためにしっかりとどんな人たちかを紹介するためにVTRは存在するわけです。スタッフとしては、ここにドラマ性を作ったり、はたまた同じ事務所の先輩とか、仲の良い知名度の高い芸能人からの応援コメントを入れたりしがちです。なんとか次に出てくる漫才師に興味を持って欲しいという思いからですね。でも、M-1グランプリではそういった紹介を極力排除し、全組ニュートラルな紹介に終始しました。ひとえに、公平性を保つためだと思うんです。紹介VTRの事務所の先輩のコメントによくあるんです…「✕✕のボケが抜群なんです」「◯◯のあのキャラはたまりません」。漫才直前のこういう情報、これって得する可能性も損する可能性もある危険なワードですよね。そこを排除した。今回のような、次に誰が出てくるかわからない「笑神籤(えみくじ)」制度を採用すると、紹介VTRに応援コメントを入れるなど少しでも長くして、カメラマンやスタッフに次の漫才に備える準備がほしいところなんです。ですが、そういう演出はかけなかった。すべては公平性を保つために。そんな姿勢が光っていました。
漫才師登場の洗練されたバーチャルCG
あの漫才師登場の瞬間のバーチャルCG、めちゃくちゃかっこよくなかったですか? 出囃子でファットボーイ・スリムの「Because We Can」が流れると、その音楽に合わせて、登場口にある大きな「M」の字から衝撃波が出るようなバーチャルCG。鳥肌が出るくらいかっこよかった! M-1グランプリほど、芸術的・美術的・音楽的にショーアップされた番組はなかなかないと思っています。「出囃子にボーカル入りの曲を使う」「スタジオ生放送にバーチャルCGを使う」「予選の映像を一眼レフの動画で切り取る」。こういう新たな試みを常に行なっています。素晴らしい!
審査終了後の特典発表の画
これもいつからだったでしょうか…何気なく見ている得点発表の「画」ですが、すごく計算されていると思いませんか? ひとつの画面に、「漫才師の表情」「審査員の顔」「それぞれの得点」「合計点」その全てがしっくり収まっているんです。この4つの項目は、どれも欠くことができない要素で、すべてを同時に映像で見せたい。それを1画面で成立させるために、考え抜かれた画面構成。本当は最後に出てくる「合計点」はもっと大きく見せたくなるんですが、この瞬間に漫才師の表情が映像でとれるように、わざと小さめのサイズで合計点の発表をしています。そのときのカメラワークまで含めて、本当に計算されていると思うのです。
あえてアナログにした「笑神籤(えみくじ)」
そして、最後はやはり新システムの「笑神籤(えみくじ)」について。出番順をその場で決める最も注目されたこのシステムを、あえてアナログな「クジ」でやり通しました。ここをもっと華やかに、デジタルに、バーチャルに、ショーアップし演出することはもちろん可能だったと思います。でもあえて、普通のくじにした。結果もっちゃりする場面も何度か見られました。でも、それより優先すべきことは「公平性」「透明性」。そこに最後までこだわる、スタッフの意地を見ました。
最後に…結局1組目の不利は解消できなかった
なんだか気持ち悪いくらいに、M-1グランプリを褒め称える記事になってしまいましたね(^_^;) 読み返してみると、もうお前、ほんとは関係者だろ!と思われても仕方ないような文章です…苦笑。でももちろん、残念な点もいくつかありましたよ。
・「笑神籤(えみくじ)」で選ばれる直前の漫才師の顔が映らない
・あえてアナログにしたおみくじ、でももっちゃりさせない工夫はあったはず
・和牛の漫才おわり、FDが予選敗退となった人の伝え間違いミス
・そして何より、結局1組目の不利は解消できなかった
僕はこの4つは残念だなとは思いました。特に視聴者の方は3つ目のミスは目についたかもしれませんね。FD(フロアディレクター)というのは、MCに対していわゆる「カンペ」を出して、番組の進行をする役目の人ですが、少々舞い上がっていたのかもしれないですね。たとえば決勝の説明をするMC2人も、すごくたどたどしくなっていました。きっとMC2人に出すFDのカンペのタイミングが遅かったんだと思うんです。決勝の3組の漫才おわりに感想を聞くかどうかも、MCの今田耕司さんにはしっかりと伝わっていませんでした。生放送ですから、このあたりのミスは結構目立ちます。それでも、これくらいのミスでよく収まったなと…。最悪のミスは「賞コンテストの結果に影響を及ぼす」ような、たとえばVTRが出ないとか、くじ引きにミスが出るとか、そういう類のもの。これだけのチャレンジをして、そんな大きなミスがなかったことは十分賞賛できると思います。
そして4つ目の「結局1組目の不利は解消できなかった」。難しい問題ですよね。運悪く最初の出番順になってしまったユニバース。結果は残念なことになってしまいました。もし出番順が後半だったら…という声もネット上でもたくさん見かけます。スタジオでも、トレンディエンジェルの2人が「後半で見たかった」と発言されていました。結果として、1組目の不利は解消できなかったことは明らかでしょう。きっと制作陣はさらなる改良を模索すると思います。
ただ1つだけ。僕はかつてあるご縁があって、M-1グランプリの決勝をお客さんとしてスタジオで見たことが有ります。その頃は今回の「笑神籤(えみくじ)」制度はなく、当然トップバッターが不利なのではと思っていました。ですが、会場で見ていて驚きました。なんとかトップバッターが不利にならないように、会場ではある工夫がなされていました。それはCM中。CM中というのは、お客さんをほぼ ”ほったらかし”にするような番組もなかにはあるんです。一瞬空気が落ち着いてしまうんですね。スタッフから「伸びでもしてリラックスしてくださいー」といった説明があったりはしますが、本番中のような空気はなくなってしまいます。「中説」と呼ばれる芸人さんが出てきて、場を盛り上げることもありますが、それでもやはりCMをあけてすぐの漫才、まして最初の出番の漫才は、お客さんの空気が重くなり審査をする上では不利になることが多いんです。そんな不利を解消するためでしょう。僕が見たときのM-1グランプリの会場では、CM中にあるVTRが流れていました。「過去のM-1王者たちの漫才ダイジェストVTR」です。歴代の優勝した漫才が、CMタイム内にちょうど収まるように、そしてそれを見ることでお客さんの笑いの熱が冷めないように、見事に編集されているのです。決して日の目を見ることはないのに、少しでも会場を温めようとするためだけに編集されたVTR。会場にいるわずか数百人のお客さんのテンションを保つためだけに、番組並のクオリティのVTRをわざわざスタッフたちは作っていたんですね。これには僕は本当に感動しました。恐れ入ったと。
そんな漫才のことを愛し、漫才のことが大好きで、漫才に真摯に向き合うスタッフたちが頑張って作っているM-1グランプリ。やれ八百長だとか、やれ予選の審査がおかしいとか、批判はつきものですが、僕はずっとずっと応援していきたいと思ったのでした。ちなみにすべての内容は僕の推測と感想です。間違っていることもあるかもしれませんし、勘違いしていることもあるかもしれません。関係者のみなさまにご迷惑かかるようでしたら、消去いたしますのでお知らせくださいませーm(_ _)m ほんとはジャルジャルに決勝上がってほしかったなーーー\(^o^)/
ちなみに…このブログのメイン記事は「マイレージ」。番組終了がきっかけで大好きになった若手女優さんとの「マイレージ」の話
ちなみに…ボクも数々のバラエティ番組を担当しました。そんなバラエティ番組終了に直面し、そのときにとある若手女優さんのことが大好きになったんです!そんな裏話も含めた【ある女優さんとの実話】ANAマイルを貯めないと大損! 超初心者が知っておきたいマイレージに関する7つのコト 」もよろしければどうぞ。海外旅行が大好きなのにマイルを貯めたことがないと豪語していた、とある若手女優さん。そんな彼女に「マイレージとはなんぞや」を教えた実話を元にした「初心者向けマイレージ解説」ですー\(^o^)/